企業型DCにも二種類ある

確定拠出年金(DC)制度の企業型には、大きく分けて二つのパターン「退職金DC」と「選択制DC」があります。 

「退職金DC」は企業の退職金制度の一部(もしくは全部)に位置付けられる一方、「選択制DC」は福利厚生の側面が強い点が特徴です。

同じ法律に基づく制度にもかかわらず、両者は大きく異なるため、社内の担当者が社員へ説明をする際には気を付けるポイントも異なります。

退職金DCと選択制DCは、社員の意思決定タイミングに差がある

退職金DCと選択制DCは、運用商品の選択や60歳まで原則、引き出せないという点は同じですが、掛金の原資による違いがあります。この違いは、社員の意思決定タイミングにも違いをもたらします。それぞれ詳しく見ていきましょう。

<退職金DC>

退職金を原資としているため、原則、全員加入となる制度です。そのため事業主が説明するポイントは、運用とは何か、運用をどうするのかになります。

事業主掛金は給与とは別の設定になるため、「給与とは全く別に、会社が皆さん個々人のDC口座に掛金を振り込みます」「掛金は退職金の一部(もしくは全部)なので、金額については退職金規定等を確認しましょう」「退職金制度のため、3年未満で自己都合退職した場合などは掛金が会社に返還されます」等の注意事項を説明します。

つまり、「加入」の時点では、社員の意思決定が不要ということになります(退職金DCであっても、加入や掛金を選択できるケースもあります)。

とはいえ、加入者掛金(マッチング)拠出が設定されている場合は、給与から拠出するかどうか、金額をいくらにするのかを決める必要が生じます。そのため、マッチング拠出の案内に際しては、「会社が負担する掛金に加えて、自分の給与からも天引きで掛金を拠出できる税制優遇制度です」「活用は個々人の任意ですが、非常に魅力的な税制優遇が活用できます」という説明が加わります。

このように、いったんは「会社が拠出する掛金が基本」と説明しつつ、「自分の給与からも拠出できる」という話をすると、聞いている社員はかなり混乱するようです。そのためイメージ図や給与天引きのタイミング、制度スタート後も定期的に申し込みや金額変更の機会があることを説明に加えつつ、少しずつ内容を膨らませる工夫をしましょう。

<選択制DC>

選択制DC では、加入者自身がDCの掛金にすることのできる原資について、そのままDC掛金とするのか、それともDC掛金にはせずに給与や賞与と一緒に受け取るのかを選択します。つまり選択制DCは、DCを活用するかどうかの意思決定が加入者に委ねられます。

そのため、老後の資産形成が必要であること、DC制度は税制優遇が大きく効率的に資産形成できることなどに力点を置いた説明が必要になります。

なお、選択制DCでは勤続3年未満での事業主返還はほとんど設定されていません。