「選択制DC」の掛金は「給与収入」ではない

選択制DCを理解するためには、退職金制度がない企業をイメージすると分かりやすいかもしれません。

設立まもない企業では、報酬はすべて給与や賞与で支払われ、退職金制度までを準備できるケースは多くありません。そこで、社員の老後の所得確保のために、「器」としての企業型DCを用意し、その器を活用するかどうかは本人の選択に委ねるという運営がなされるようになりました。

つまり、報酬にはあらかじめ前払い退職金が含まれており、それを退職金としてのDC掛金とするのか、それとも給与や賞与として受けとるのかを社員が選択できるようにしたものといえます。

ここで忘れてならないポイントは、企業型DCの事業主掛金は、退職金の位置付けにあるため所得とはみなされないことです。つまり「給与収入」ではなくなります。選択制DCの掛金であっても、事業主掛金の位置付けとなります。

選択制DCの掛金は、実態上は給与からの拠出と同様にとらえられますが、給与収入ではなくなるため所得税・住民税がかからず、社会保険料もかからない資産としてDC口座に積み立てられることになります。その結果、給与で受け取るよりも3割程度は「お得」になると考えられます。

マッチング拠出がいったん給与収入となったあとに控除項目として処理される点とは異なります。

一方で、選択制DCの掛金は給与収入ではないため、年収が下がります。ローン審査など「年収」が大事な判断基準となる際には、選択制DCの拠出は最低限にするという切り替えも必要です。