おひとりさまになった佐々木さんが抱いた不安

佐々木さんは70代で、4年前にご主人を亡くしていました。聞けば、佐々木さん夫妻は20代の頃にご主人の親が経営する建設会社で出会い交際を始めましたが、ご主人の親が身寄りのない佐々木さんとの結婚に猛反対したため、駆け落ち同然で上京したのだそうです。奮起したご主人は都内で電気整備の会社を興し、一時は従業員を10人近く雇うまで大きくしました。

しかし、跡取りの一人息子を交通事故で亡くしたこともあり、5年ほど前には事業を清算し、あらかじめ2人で決めていた老人ホームに入居しました。肩の荷を下ろしてほっとしたせいか、ご主人の方はその翌年脳梗塞で倒れて寝たきりになり、佐々木さんの懸命な看病もむなしく、息を引き取ったということでした。

佐々木さん夫妻はそのうち2人でお墓を探そうと、亡くなった息子さんのお骨も手元に置いたままでした。一人ぼっちになった佐々木さんは、ご主人の相続が一段落して自分の終活を始めようとした矢先に体調を崩して私の勤務先の病院を受診し、末期のすい臓がんという診断を受けたのです。

「会社も自宅不動産も処分して身軽になったつもりだったけれど、お父さんの葬儀や相続の手続きをするのはなかなか大変だった。自分にはそういうことを任せる身内がおらず、身内以外で誰に頼んだらいいかも分からない」