<前編のあらすじ>

麻友(42歳)は1年前に夫を交通事故で亡くしてから、息子の悠輔(17歳)が不登校になり外出もせず家でゲームばかりをしていることを心配していた。ある日、麻友が残業で夜遅くに帰宅した日、思いやりのない悠輔の言葉がきっかけで激高してしまった結果、悠輔のゲーム機を床に落としてしまう……。

●前編:引きこもり息子の面倒をいつまで見ればいいのか…シンママが「思わずゲーム機を落とした」息子の一言

 

さらに引きこもってしまった息子

結局、ゲームは大丈夫だったようだ。

ようだ、という表現になっているのは確かめられてないから。あれから悠輔は部屋からもほとんど出なくなってしまった。

原因はもちろんあの夜にある。

仕事での疲れから悠輔に当たってしまったのは確かだった。しかしそれでも麻友は自分が本当に悪かったとは思えない。そもそもあの夜に息子に向かって発した言葉は、胸の奥にあったものでもあった。謝れば、もしかしたら、また以前のように一緒に食事を取れるようになるかもしれない。しかし、謝ることであの夜の発言を否定するのも違うと思う。

麻友はいつまでも悠輔のことを守れない。そのことに気づいてほしいと思う親心も、あの夜の怒りと同じように真実だった。

だからこそ、麻友は謝らなかった。