「どこに行けばいいわけ?」ごね始めた弟
ところが、思わぬところから横やりが入りました。“子供部屋おじさん”の弟です。
「そんな大事なことをお母さんとお姉ちゃんで勝手に決めないでよ。家がなくなったら僕はどこに行けばいいわけ? そもそもお母さんは『弘之はずっとここにいていいよ。いずれは弘之のものになるんだし』と言ってたんだからさ」
全く当事者意識がなく、自分のことしか考えていない弟に腹が立ちました。「それならお前がお母さんの施設代を払ってくれるの?」と切り返すと、「お姉ちゃん、僕の懐事情は知ってるでしょ? そんなの払えるわけないじゃん」と薄笑いを浮かべます。
子供の頃は口数こそ少ないけれどいつもニコニコしているやさしい子だったのに、いつの間にこんなクズ野郎になったのだろうと思いました。
しかし、背に腹は代えられません。母と話し合い、近くに住む叔父(亡父の弟)にも間に入ってもらって弟を説得し、実家の売却に同意させました。しかし、弟はさんざんごねて、2400万円という実家の売却益の中から毎年100万円ずつ5年間、計500万円を受け取ることになったのです。
分割にしたのは司法書士をしていた叔父の助言で、新設された相続時精算課税制度の非課税枠(年間110万円)を利用して贈与税がかからないようにしたと聞きました。
さらにむかついたのが、その後の弟の行動です。さっさと勤務先の近くに賃貸物件を見つけて出ていったのはいいけれど、売却が決まった実家の片付けをするつもりは毛頭なく、仕方なく夫や子供たちも駆り出して丸々1週間実家に通い、不要な電化製品や家具、衣類、本などを処分しました。
私たち一家は無報酬。しかも、その間私はパートに出られませんから実質減収で、まさに踏んだり蹴ったりです。事情を知る母だけが、「お前にだけ面倒なことを押し付けちゃって悪いね」とねぎらってくれました。