インフルエンサーがきっかけで大盛況に

しかし入れ直した気合とは裏腹に、勇太はやってきてくれるものの、それ以外のお客さんが来ない日々が続いた。

そんな状況が一変したのは、夏休みも間近に迫った7月のある日。

めげることなく続けていたSNSでの宣伝を、自身でも子ども食堂を運営しているインフルエンサーが宣伝してくれたことがきっかけだった。

加速度的に増えるフォロワーといいねの数に面を食らった早苗だったが、戸惑いはすぐに喜びへと変わる。次の子ども食堂の営業日から、お客さんの数が増えたのだ。

共働き家庭で夕飯はいつもコンビニだったという中学生がやってきて、夜勤でお母さんがいないからと、小学生の女の子が弟を連れてやってきた。3席しかないことが申し訳なくなって、早苗はお店の裏のベンチをすぐに開放しに向かう。

「おばちゃん、どうしたの?」

「あ、勇太くん! こんにちは。今日はね、お友達がいっぱいだよ」

遅れてやってきた勇太は慌ただしくしている早苗を見て目を丸くする。早苗は勇太にお弁当を1つ渡し、スタンプカードにスタンプを押してあげる。

「お、常連さんが来たね」

店長もキッチンの奥から勇太を歓迎する。意味が分かっているのかいないのか、勇太はどこか誇らしげな表情をしている。

子ども食堂が繁盛したおかげで、早苗の休憩時間は見事になくなった。しかし充実感はこれまでと比べものにはならなかった。