マドレーヌを作る気力
翌日、みわはまたスーパーへ買い出しに出掛けた。
けれど今回買うのは猫用の缶詰ではない。クッキーやチョコレート、それから記憶から引き出したレシピを頼りにバターやグラニュー糖、はちみつとバニラオイルを買い込んだ。
お菓子作りは久しぶりだ。まさかまたお菓子を作ろうと思うことがあるなんて、自分でも驚くことばかりだ。
家に帰って、みわは早速取り掛かる。一晩考えて、今の子供が好きそうなお菓子を考えたつもりだったけれど、口には会うだろうか。ボウルにあけた卵をグラニュー糖と混ぜながら、そんなことを考えた。
マドレーヌが焼きあがるころ、玄関の呼び鈴が鳴った。みわはタクヤとユウスケを出迎える。ところが今日はもう2人、彼らの後ろに女の子がいた。
「おばあちゃん、猫の話したらこいつらも来たいって言うから連れてきちゃったんだけど、大丈夫?」
2人も4人も変わらない。みわはマドレーヌを多めに焼いておいた自分を内心で褒めた。
「どうぞ。まだ猫ちゃん来てないんだけどね、お菓子を焼いたから」
「いい匂いがする!」
女の子の1人が声をときめかせる。みわは4人を快く招き入れた。