退職給付制度と勤続年数も相場に影響

企業規模や業種以外に退職金へ影響を与える要素はないだろうか。より広範に調査する「就労条件総合調査」を見ると、退職給付制度と勤続年数が候補に浮かぶ。同調査は常用労働者30人以上を雇用する民営企業6400社を対象に集計している。

退職給付制度別では退職年金を採用する企業で退職金が高くなる傾向が読み取れる。2018年調査と2023年調査の双方で、退職一時金のみの企業より退職年金を導入する企業の方が高額となった。

【退職給付制度別、退職者1人あたり平均退職給付額(定年、大学・大学院卒)】

   2018年調査   2023年調査 
 退職一時金のみ 1678万円 1623万円
 退職年金のみ 1828万円 1801万円
 退職一時金+退職年金 2357万円 2261万円
(参考)退職給付制度計  1983万円 1896万円

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

出所:厚生労働省 就労条件総合調査(令和5年)

ただし退職年金制度は大企業で先行している。退職給付制度ではなく、やはり大きな企業規模が退職金を高めている可能性には注意したい。

より退職金に影響を与えると考えられるのが勤続年数だ。2018年調査と2023年調査のいずれも勤続年数に比例して高額となっている。また勤続が35年に満たない場合、いずれも全体(勤続20年以上かつ45歳以上)の平均を下回った。単純な比例ではなく、一定以上の勤続を優遇して増額している様子がうかがえる。

【勤続年数別、退職者1人あたり平均退職給付額(定年、大学・大学院卒)】

   2018年調査   2023年調査 
 勤続20年~24年 1267万円 1021万円
 勤続25年~29年 1395万円 1559万円
 勤続30年~34年 1794万円 1891万円
 勤続35年以上 2173万円 2037万円
(参考)退職給付制度計  1983万円 1896万円

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

出所:厚生労働省 就労条件総合調査(令和5年)

3つの統計から退職金の相場を探った。企業規模が大きいほど、また勤続年数が長いほど高額になるようだ。また業種や退職給付制度の違いも影響を与えると考えられる。比較の参考にしてほしい。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)