米ITの巨額買収から2年 フェーズは改革から安定成長へ
日立製作所は2021年、アメリカのIT企業グローバルロジックを約9180億円で買収しました。前年のスイスABB社の電力システム事業の買収(約7500億円)を上回り、日立製作所の歴史で過去最大のM&Aとみられています。
グローバルロジック社の買収は報道が先行しました。巨額な買収費用が投資家の不安を誘ったのか、報道直後は株式が売られる展開も見られました。
【日立製作所の株価(日足終値、2021年3月~2021年4月)】
グローバルロジック買収の狙いはデジタル人材の強化にあるとみられています。日立製作所は2022年に中期経営計画(2022年度~2024年度)を発表しました。これまで進めたグループの再編から安定成長へと主軸を切り替える計画です。
その実現を支えるのが人材戦略です。日立製作所はITサービスを軸にグローバル展開を進めており、優秀なデジタル人材の獲得が急務となっています。グローバルロジックは人材の獲得に長けており、世界各地にリクルーターを配置するほか世界の著名大学とも連携しています。
グローバルロジック買収の効果はすでに表れています。2021年度に6万7000人だったデジタル人材は2022年度に8万3000人にまで増加しました。2024年度までに9万7000人まで増やす計画も公表しています。
【デジタル人材の数】
国内 | 海外 | |
2021年度 | 2万9000人 | 3万8000人 |
2022年度 | 4万2000人 | 4万1000人 |
2024年度(計画) | 3万8000人 | 5万9000人 |
出所:日立製作所 中期経営計画
デジタル人材はグーグルやアマゾンなどの巨大IT企業との獲得競争が激化しています。日立製作所はグローバルロジック流の採用スキームで優秀な人材を確保し、成長を目指します。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)