エムスリーの株価が低迷しています。2020年には買いが集まり、2021年1月に1万0675円の高値を付けました。しかしその後は下落傾向にあり、2023年9月末の株価は2716円とおよそ4分の1にまで値下がりしています。
【エムスリーの業績】
売上高 | 純利益 | |
2022年3月期 | 2081.59億円 | 638.45億円 |
2023年3月期 | 2308.18億円 | 490.28億円 |
2024年3月期(予想) | 2500.00億円 | 500.00億円 |
※2024年3月期(予想)は同第1四半期時点における同社の予想
出所:エムスリー 決算短信
【エムスリーの株価(月足、2020年9月~2023年9月)】
苦戦するエムスリーですが、株価純資産倍率(PBR)から見た株価はまだ高く評価されていると考えられます。2023年7月から算出が始まった「JPXプライム150指数」には、市場評価(PBR基準)の高さから構成銘柄に選ばれました。
エムスリーとはどのような企業なのでしょうか。またなぜ最近の株価は下落傾向にあるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
医師の9割が利用するメガプラットフォーマー
エムスリーはインターネットを活用した医療関連サービスを提供する企業です。2000年にソニーグループが出資して設立されました。ソニーグループは現在でも株式の3割以上を所有する筆頭株主です(2023年3月末)。社名は医療(Medicine)、メディア(Media)、変容(Metamorphosis)の三つのMを表しています。
エムスリーの看板商品は「m3.com」です。会員制の医療情報サイトで、国内で32万人、世界では650万人の医師が登録しています。これは国内の9割以上、全世界の50%以上の医師をカバーする計算です。
圧倒的な会員基盤を持つm3.comをプラットフォームとし、さまざまなサービスを展開できる点がエムスリーの強みです。製薬企業向けのマーケティング支援事業や治験支援事業、さらに医療専門職に特化した転職サービスや調査サービスなどを提供しています。
【セグメント業績(2023年3月期)】
売上高 | 利益 | |
メディカルプラットフォーム | 930.98億円 | 411.47億円 |
エビデンスソリューション | 271.57億円 | 76.62億円 |
キャリアソリューション | 145.38億円 | 46.44億円 |
サイトソリューション | 352.95億円 | 37.45億円 |
海外 | 620.95億円 | 169.90億円 |
その他エマージング事業 | 32.84億円 | 9.45億円 |
出所:エムスリー 決算短信
エムスリーは代表的な成長企業で、売上高は右肩上がりに増加してきました。プラットフォームビジネスで大きく成長していることから「日本版GAFA(※)」とも呼ばれることもあります。
※GAFA:アメリカの代表的なIT企業4社(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の頭文字から作られた造語。なおグーグルの親会社はアルファベット。またフェイスブックはメタ・プラットフォームズへ社名を変更している。
なお、2023年3月期は最終減益となりました。前期に中国子会社の新規上場に関連する一過性の利益309億円が計上されたことが主な原因で、この影響を除けば11%の営業増益でした。
【売上高と純利益の推移】