新NISAの浸透とともに、投資家ならびに金融業界にとって資産形成における確かな指針が問われている。多様な情報があふれる今、その答えを見つけるヒントはどこにあるのか。「本当に良いファンドとは?」——日本初の投資信託専門誌『投資信託事情』の発行人として約30年にわたり業界の光と影を見つめ続けてきた島田知保氏に聞く短期連載の第1回は「本当に良いファンドを見抜くには?」をテーマにひも解いていく。

異業種から飛び込んだ私が見た「業界の本音」——信託報酬の“真意”

業界に入って島田氏が真っ先に感じたのは、投資信託がいかに内向きの商品であるかということだった。

「信託報酬という言葉がありますよね。“報酬”とは本来、もらうものを指す言葉です。しかし投資信託の場合、購入するお客さまから見たら“支払う”もの。お客さま側から見れば、報酬ではなく、手数料というわけです」(島田氏、以下同)。

業界側から見れば、“いただくもの”。だから報酬と呼ぶ——。バブル崩壊から日本経済を覆い続けてきた不況の波が資産運用業界にも影を落としていた1995年。業界に飛び込んで感じた違和感は、言葉一つをとっても「売り手本位」が前提にあることだった。

販売パンフレットには難しい言葉が小さな字でぎっしりと並び、一般の人には何が書いてあるのか分からない。しかし島田氏はそれを逆手に取った。「自分が分からないことを分からないと言い続けることにも、意味があるのではないか」。小口で少額から投資できる投資信託は本来、一般の人々の資産形成に資するものであるべきだ。その信念は今も変わらない。

投資信託の世界に入ったのは巡り合わせによるものだった。宇宙科学研究所(現JAXA)などを経て議員秘書の仕事をしていた矢先、議員の落選とともに自身も失職。前年に亡くなった父が発行人を務めていたのが『投資信託事情』だった。紆余曲折を経て事業を引き継ぐことになったが、何も知らない自身を多くの人が助けてくれた。その恩が今も活動の軸となっている。だからこそ、“分からない”立場の視点を大切にする。