投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、楽天証券のデータをもとに解説。

楽天証券の投信売れ筋ランキングの2026年8月のトップ2は前月と同じでトップに「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)、第2位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」だった。前月第3位だった「楽天 日本株4.3倍ブル」は第5位に後退し、第4位だった「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」、第5位だった「楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド」が順位を上げた。また、第6位だった「WCM 世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)」は第9位に落ち、「楽天全米株式インデックスファンド」、「楽天・プラス・NASDAQ-100インデックス・ファンド」、「iFreeNEXT FANG+インデックス」が順位を繰り上げた。

※楽天証券サイト「投資信託」「全銘柄ランキング(買付金額)」に基づいて編集部作成。期間:2026年8月1日~8月31日。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/find/ranking/ranking.html?term=m&target=all&age=all&x=114&y=5&type=500001&freqid=3&tget=1&group=all

「国内株」の先行きを警戒?

楽天証券の2026年8月の売れ筋ランキングは、変化に乏しかったものの、従来の主力ファンドである「オルカン」(設定は三菱UFJアセットマネジメント)や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(三菱UFJアセット)、そして、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(楽天投信投資顧問)など、外国株式インデックスファンドが順位を上げ、国内株に対する強気姿勢を象徴する「楽天 日本株4.3倍ブル」(楽天投信投資顧問)が大きくランクダウンした。前月第10位に入っていた「SBI 日本株4.3ブル」(SBIアセットマネジメント)はトップ10圏外に落ちたことでトップ10には国内株ファンドが1本だけになってしまった。

8月の主要な株価指数は、米国「S&P500」は2.62%高、「NASDAQ総合」は3.93%高と反発。欧州株は英「FTSE100」は0.40%安だったものの、独「DAX」は2.45%高としっかり上げ、国内株は「TOPIX」が3.82%高、「日経平均株価」は3.03%高だった。先進国の株価はおおむね堅調だった。国内株は7月に「日経平均株価」が8.14%安と急落し、8月の戻りに力強さが感じられなかった。この動きの鈍さが今後の警戒感につながっているのかもしれない。新興国では中国「上海総合指数」が4.02%高、インド「sensex30」は1.46%安とまちまちだった。

「楽天 日本株4.3倍ブル」は、7月に39.34%安と大きく下落したが、8月の反発では16.12%高にとどまっている。6月末と比較して8月末の水準は29.57%安と30%近く低い水準になっている。このような反発力の弱さが高値奪還まで時間がかかるのではないかという懸念を生んだのだろう。

一方、国内の長期金利は指標となる新発10年国債利回りが8月18日には1996年9月以来約30年ぶりの水準となる2.945%に上昇するなど国内金利の水準が急速に上がってきている。9月1日にはついに3.0%の水準に達したが、この金利水準が国内企業の業績、個人消費など国内経済に与える影響も気になるところだ。

国内金利は30年ぶりに3%台に上昇、市場への影響は?

1999年2月に導入された国内のゼロ金利政策は、2000年8月、2006年7月にいったん解除されつつも2016年のマイナス金利政策を経て、2024年3月のマイナス金利政策の解除(事実上のゼロ金利政策解除)まで約25年間にわたって国内の政策金利がゼロ%台の状態が続いてきた。この結果、銀行が企業に融資する際の貸出金利も短期プライムレート(最優遇貸出金利)で1.375%~1.5%程度、長期プライムレートは1.0%前後~2.0%前後で低位に推移してきた。それが、2026年8月には短期プライムレートは2.375%、長期プライムレートは3.25%になっている。新発10年国債利回りが3.0%台だった1996年当時の短期プライムレートは1.625%、長期プライムレートは3.0%前後だった。それより1年ほど前、10年国債利回りが3.5%程度の時には短期プライムレートは2.375%~3.0%、長期プライムレートは3.1%~4.5%だった。

今後の金利の水準が、どの水準で落ち着くのかにもよるが、2.0%程度の金利で融資が受けられた世界と、4%台の金利でなければ借りられない世界では、明らかに企業の事業戦略の立て方が変わるだろう。事業拡大をめざす投資は、より慎重に選別した投資を心がけるようになる。もちろん、借り入れ過多の企業、自力で社債発行など低利の資金調達が難しい企業の新規投資は難しくなる。企業の財務内容やビジネスモデルの違いによって成長力に明確な違いがでてくるようになる。株式市場は、当然ながら、このような変化を株価に反映させることになる。これまでのように、日経平均株価が4万円、5万円、7万円へと一直線に上昇してきた動きとは異なる動きになるだろう。国内株ファンドへの投資意欲が一斉に減退したかのように見える8月の売れ筋ランキングには、変化に身構える投資家の逡巡(しゅんじゅん)がみえるようだ。

執筆/ライター・記者 徳永 浩