これまで過去の記事で紹介してきたG&G事件(【なぜ詐欺師の逮捕に時間がかかる? ジレンマ残る「G&G事件」の結末】)やMRIインターナショナル事件(【14年間で約8000人の被害…巨額詐欺事件で悪用された“ある投資手法”】)と同様、これも海外投資スキームを用いた詐欺事件でした。
改正外為法の施行を中心とした金融ビッグバンが追い風(?)となったのか、海外投資スキームを利用した金融詐欺が、一気に増えた印象があります。エンジェル・ファンド・ネットワーク事件も、その1つです。
高金利を売りにした手口
エンジェル・ファンド・ネットワークは、米国デラウェアに本拠を構えるパーソナルファイナンスのフランチャイズチェーンという、うたい文句で登場しました。運用商品のリターンは、年16.43%から18.90%。90年代の前半から金利水準が低下傾向をたどっていた日本国内において、この高金利は大いに個人の目を惹きました。
問題は、いかにしてこれだけのリターンを実現するのか、です。
「エンジェル・ファンド」という名称からすると、投資信託の一種のようなイメージを持たれるかもしれませんが、実際の仕組みは投資信託とは全く違います。具体的に言うと、資金を運用したい個人と、資金を調達したい企業を結びつけることによって、個人資金を企業に直接、融資させるというものです。
そして、エンジェル・ファンド・ネットワーク・コーポレーションは、融資をしたいという個人と、資金を借り入れたいという企業との間を取り持つマッチング業者のような立場になります。
エンジェル・ファンド・ネットワークは、個人に対して自分たちのビジネスモデルの利点を、次のように説明していました。
「通常、個人は銀行預金を通じ、企業に対して間接的に資金融資を行っています。しかし、個人から企業へと資金が流れていく間には、銀行やノンバンクなどの金融機関が介在しているため、最終的に金融機関から企業への貸付金利が年24%~36%という高いものであったとしても、個人の手元に還元される預金利率は、普通預金にして年0.1%、定期預金で年0.3%程度に過ぎません(当時)。
これに対してエンジェル・ファンド・ネットワークは、エンジェルパートナーと称される個人加入者が、エンジェル社に融資を申し込んできた優良中小企業に対して直接、資金を融資するため、従来の金融の流れでは実現できなかった高金利を、個人加入者に対して還元できます」