懸命に行われた救助活動の末…

父の通報を受け、県警による救助活動がスタートしました。母の携帯には何度も警察から連絡が入り、とうとう「対策本部を立ち上げました」と告げられました。

その後、遭難した場所が滋賀県と三重県の県境にあったため、滋賀県警と三重県警の両方からヘリコプターが1機ずつ、なんと父1人のために2機のヘリコプターが出動したそうです。

父の携帯には「ヘリコプターの音は聞こえますか?」「どっちの方向にヘリコプターが見えますか?」などと救助隊から電話が入り、居場所を特定するための質問が続きました。ヘリを見つけた父はヘッドランプの光をヘリの方に向け、最後には無事救助されました。

救助にかかった費用は?

さて、救助のためにヘリが出動したとなると、「一体いくらかかるのだろう?」と疑問に思った人もいるかもしれません。驚くことに、出動したのが警察のヘリだったため、父が救助活動に対して支払ったお金はゼロ。ヘリを2機も飛ばしておきながら、なんと1円も払う必要がなかったのです。

父は「迷惑をかけて悪かった」と大反省していました。世間に大迷惑をかけ、ここまで一生懸命に救助活動をしてくれた人たちがいるにもかかわらず、費用の請求がされないのは、逆に罪の意識を高めるのかもしれませんね。

ちなみに、県警のヘリは山岳救助専用というわけではないため、他の事故で出動していれば民間会社のヘリが出動します。この場合、1時間あたり50万円ほどかかるようです。父の場合、山岳保険に加入していて救助費用が補償の対象となっていたため、仮に民間ヘリが出動していたとしても、自己負担は発生しなかったと思われます。

警察庁「令和4年度山岳遭難の概況」(令和5年6月15日)によると、昨年の山岳遭難の発生件数は、なんと3015件。登山に遭難リスクはつきものです。すべての遭難にヘリが出動するわけではないかもしれませんが、万一の高額な救助活動に備え、登山時の保険加入はもはや必須と言えるでしょう。

●その後、筆者は父の遭難事件をきっかけに、万一に備えて親と「お金の話」をすることに。詳細は後編【「親とお金の話がしづらい」という人が知らない“自然な”会話の切り出し方】で解説します。