高木恒夫さん(仮名)が定年退職で会社を去ってから14年になります。「退職時は営業課長、ごく普通のサラリーマン人生を送ってきた」と振り返る高木さんには、退職時に親の遺産や退職金などで約2000万円の貯蓄がありました。
しかし、なんと10年余りでそれが半減。そして、ここに来てさらに、追い打ちをかけるような出来事が勃発したそうです。
「うちの両親は自分たちと同じサラリーマンと専業主婦だったけれど、老後は経済的にもっと余裕があるように見えた」と嘆く高木さん。しかし、70代半ばでは再就職も難しく、現役時代に資産運用でもしておけば良かったと悔やんでもあとの祭りです。
高木さんが話してくれた年金暮らしの苦境からは、「年金だけでは暮らしていけない」今の日本の厳しい現実が見えてきます。
〈高木恒夫さんプロフィール〉
埼玉県在住
74歳
男性
年金生活者
一人暮らし(妻は施設入居)
金融資産880万円
私は70代の元サラリーマンです。大学卒業後、郷里の建設会社で40年間勤め上げ、14年前にリタイアしました。退職時の役職は営業課長でした。
就職したのは大阪万博の翌年の1971年です。高度経済成長期の最後の方で、日本の人口は毎年100万人単位で増えていました。東京の銀座にマクドナルドの国内1号店がオープンし、日清食品からカップヌードルの第1弾が発売されたのもこの年でした。
入社当初は地方でも社会インフラや個人住宅の建設ラッシュが続き、取引先や建設現場を飛び回りながら馬車馬のように働きました。