日本も支給開始年齢を引き上げ途上

遠く離れたフランスで生じている混乱……果たして日本に住む私たちにとって「無関係」と言えるのでしょうか。

先進国はますます進む少子高齢化という問題に直面しています。将来世代のために年金制度を維持するためには時に「痛みを伴う改革」も必要でしょう。社会保障制度も充実している先進国で年金制度が崩壊することは、国そのものが成り立たなくなることを意味しますので、年金制度の改革は避けては通れません。「誰かが改革をしないといけない」待ったなしの状態であるのはフランスに限りません。

当然、日本も例外ではありません。

平均余命がフランスよりも長い日本は超高齢社会を迎え、現在60歳から65歳へと年金の支給開始年齢を引き上げている最中です。65歳までの勤務が当たり前、年金は65歳開始が原則となっています。もはや、かつてのように、60歳で定年を迎え、60歳から年金を受給する時代は終焉を迎えつつあります。

また、制度を持続可能とするため、「マクロ経済スライド※2」による給付の抑制も行われています。

※2 マクロ経済スライドのさらなる詳細については、過去記事『「年金は破綻する」と嘆く人は知らない―年金を“持続可能”にする驚きのカラクリ』をご覧ください。

ただ、少子高齢化の勢いはすさまじく、この後日本にさらなる改革がないとも限りません。一部メディアで「支給年齢は70歳になるのでは!?」との説を目にした方もいるかもしれません。すぐにそうなる可能性は低いにしても、長い目で見れば、荒唐無稽と切り捨てることもできないでしょう。

日本の年金改革のゆくえ…注目ポイントは2024年の財政検証

日本の場合、勤労意欲の高い高齢者も多く、定年後も何らかの形態で働くことも実際多いでしょう。その影響か、支給開始年齢引き上げや定年延長といった改革を行っても、今回のフランスのような暴動にまで発展しているケースは見られず、不平不満はあっても、どうにか“受忍”しているところがあります。年金で足りない分については、働くことでカバーしようとする考えも比較的根付いているのかもしれません。

とはいっても、日本では2024年には再び5年に1度の財政検証が行われます。その財政検証の結果を踏まえて、新たな改正への議論も深まることでしょう。

こうした改正動向を“自分事”にして理解し、将来の年金受給、老後資金について見通しや計画を立てていくことは、これから日本で老後を過ごす私たちにとって必須と言えます。その際、iDeCoや2024年からの新NISAといった、税制優遇のある制度も活用した「自分年金づくり」が非常に重要なのは間違いありません。