改革案は思うように支持が得られず、強行採決へ…

すでに報道などでご存じかもしれませんが、この改革案の行方についても振り返っておきましょう。

この改革法案はフランスの元老院(上院)は通過しましたが、国民議会(下院)では与党連合の議席数が過半数を下回っていました。そして、政府与党としては、法案成立のために野党の支持が必要ななか、思うように支持は得られない状況でした。

このような状況下で、ついに政府は憲法上の強権発動(憲法49条3項)によって改革を強行しました。これは法案について議会での投票を行うことなく、政府の責任により政令でもって採択させるという規定で、内閣不信任案が可決されない限り法案は採択、不信任案可決なら法案は否決、とみなされる規定です。

この憲法上の強権発動に対して、野党からボルヌ内閣への不信任案が提出されていましたが※1、2023年3月20日に内閣不信任案は僅差で否決されることになり、結果、年金改革法案は成立することになりました。新型コロナウイルス感染症の影響などもあって、第1次マクロン政権時(2017年~2022年)では年金制度改革ができませんでしたが、第2次政権でついに実現したのです。

※1 フランスは「半大統領制」を採り、国家元首の大統領(国民の直接選挙で選出)のほか、内閣の長である首相(大統領が任命)がいます。2022年5月よりボルヌ首相となっています。

しかし、法案成立後もデモは鎮静化しそうになく、各地で放火など暴動や、デモ参加者と警官隊との衝突も起こっています。また、ストライキによって、大都市でのゴミの収集も行われないためパリの街はゴミだらけ……日常生活に支障が出ています。

当然、この状況が続くようであれば、フランスの政治、経済、社会に更なる混乱が生じる恐れもあります。

政府は、フランスの年金制度の持続のため、フランスの将来のためという信念を持って半ば強引に改革を進めましたが、引き続き予断を許さない状況です。