全てを失い、無知だった自分を悔いるばかり

どん底に落ちた私に追い討ちをかけたのが、周囲の人の対応でした。「大変だったね」と慰めてくれた人はほんのひと握り。これまで何かと目をかけてくれていた経営者の方々からはとんと音沙汰がなくなり、SNSをブロックされたりもしました。

ある社長が飲み会の席で「俺らは信用が全てだから、危ないやつは即刻切る」と冗談交じりに話していたことを思い出し、悔し涙が出ました。元はと言えば税金に無知だった自分が悪いのですが、なんだか自分が犯罪者になったような気がしました。

“ギャラ飲み”のバイトを紹介してくれた友人から連絡があったのは、そんな時です。「運営会社に調査が入ったって聞いたから、真由大丈夫かなと思って心配していたんだ」という友人に、友人自身はどうだったのか尋ねたところ、「先輩に『気を付けなさいよ』と言われて、知り合いの税理士さんに相談していたから全然平気」とあっけらかんと答えたのには驚きました。

友人はモデル時代から「自分が一番」の人です。飲み会の席で私が「真由ちゃん、うちの業界に詳しいんだね」と褒められたり、経営者の方々に人脈を広げていたりするのを見ていて面白くなかったのでしょう。とはいえ私自身もギラギラした野心を隠そうともしなかったことを反省する面もあり、喉元まで出かかった「どうして私にも教えてくれなかったの?」という言葉をぐっとのみ込みました。

3カ月の失業給付が切れた後は賃貸マンションの家賃も払えなくなり、実家に戻って細々とアルバイトで食いつないでいます。親は「真由はまだ若いのだし、新しいことにチャレンジしてみたら?」と言いますが、なかなかその気になれません。来年には起業を計画していた30歳になります。それまでには何かしらアクションを起こせたらと思いますが、今はただ失ったものの大きさに戸惑うばかりです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。