今人気の若手俳優似の赤井さんは、チノパンにデニムシャツというカジュアルなスタイルで、一見、学生のように見えました。自己紹介の際にそう伝えたら、「どなたが事務局長さんですかってよく聞かれるんだよ。僕、威厳がないから」と照れくさそうに笑いました。しかし、私の話を聞いた途端、眉をひそめてこう言ったのです。

「それは典型的な『モノなしマルチ商法』の手口だと思う。その場で契約しなかったのは正解だったね」

赤井さんの言葉に、思わず体が震えました。まさか自分が詐欺に遭うとは考えたこともなかったからです。モノなしマルチ商法とは、健康食品や化粧品などを売りつけるのでなく、実体のない投資商品を餌にお金を集める詐欺で、近年、20代を中心に急速に広がっているのだそうです。

「きっぱり断った後、DMや電話はブロックした方がいい。それで何か言ってくるようだったら、僕に連絡して。僕が話をするから」と言われ、すぐに指示に従い、マリンちゃんのSNSのフォローも解除しました。幸い、以降の接触はありませんでした。

それを機にNPOの手伝いをするようになり、家計管理や資産運用について少しずつ知識を得ていきました。それまでの私は入ってくるお金を右から左へと流しているだけで、いつも「お金がない!」と騒いでいましたが、NPOで開発したアプリを使って家計管理をしてみたら、金融機関の手数料や交通費、お菓子代など、結構な無駄遣いをしていたことが分かりました。さらに、赤井さんに紹介された都内のシェアハウスに入居しバイトも復活した結果、大学を卒業するまでに30万円ほどの貯蓄を達成。おかげで就活や就職の際は母に頼らず、自分でスーツやバッグ、靴などをそろえることができました。