なぜ金融機関がつぶれたらいけないのか
「Too big to fail(大きすぎてつぶせない)」という言葉をご存じでしょうか。主に規模が大きい金融機関に使われる言葉で、破綻させると経済に深刻なダメージを与える懸念から、経営が危なくなっても政府によって支援されることを指しています。放漫な経営を促すとして、批判的に用いられることも少なくありません。
しかし、なぜ金融機関を破綻させてはいけないのでしょうか。それは、やはり経済上の悪影響が少なくないためです。
お金はよく「経済の血液」と例えられます。お金が血液なら、金融機関は「心臓」に他なりません。銀行は融資といった間接金融によって、証券会社は株式の発行といった直接金融によって、お金を社会に流通させます。
一般的な事業会社も設備投資などを通しお金を流通させますが、金融機関と比べるとその範囲は限定的です。金融機関は業種の垣根を越えてさまざまな企業と取引しているほか、特に大規模な金融機関は金融システムにおいても重要な役割を果たしているため、破綻するとその影響は広範囲に及びます。仮に金融機関の破綻が相次げば、多くの企業が資金調達の手段を失い、事業を継続できなくなるかもしれません。
このような理由から、金融機関を破綻させることは難しく、これまで経営難に陥った金融機関の多くに公的資金が注入されました。