金融機関で「仕組み債」の販売停止が相次ぐ理由

金融機関に関連するニュースとして、最近は「仕組み債」に関するものが多く取り上げられているようです。仕組み債とはデリバティブ取引を組み込んだ複雑な債券で、通常の債券より金利が高い傾向にあります。

今年に入り、金融機関が相次いで仕組み債の販売を停止しました。リスクについて理解を得ないまま顧客に販売し、損失が発生したことで苦情が多発したことが理由にあるようです。

金融機関は、商品を販売する際にリスクなどを顧客にきちんと説明するよう義務付けられています。今回はそれに抵触する可能性があり、金融庁が仕組み債の販売方法を巡って調査に乗り出すとも報道されました。

【金融サービス提供法第6条「金融商品販売業者等の損害賠償責任」(一部抜粋)】
金融商品販売業者等は、顧客に対し……重要事項について説明をしなかったとき、又は……断定的判断の提供等を行ったときは、これによって生じた当該顧客の損害を賠償する責めに任ずる。

出所:e-Gov法令検索 金融サービスの提供に関する法律

仕組み債にもメリットがないわけではありません。損益が非線形に出現するデリバティブ取引には通常の投資にない収益があり、デリバティブ取引を組み込む仕組み債も同様です。原資産に直接投資するより、仕組み債の方が大きな利益となるケースもあり得ます。その機会を提供していると考えれば、仕組み債に需要が全くないとは言い難く、投資意向を持つ人もいるでしょう。

しかし、商品性を十分説明しないまま販売したのなら問題です。仕組み債を購入させるということは、顧客にデリバティブ取引を行わせることと同義であり、慎重な説明が求められます。

仕組み債に限らず、金融商品には特別な仕組みを持つものが少なくありません。内容を理解できない商品は、仮に信頼している人からの提案であっても即決せず、必ず仕組みやリスクについて理解してから判断しましょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。