レオスの経営危機を救ったISホールディングスの子会社化

「もうダメかも知れない」。そう思った時、救いの手が差し伸べられました。ISホールディングスが、負債も含めてレオスの株式を買ってくれたのです。そのお陰でレオスは倒産することもなく、ひふみ投信の運用も、これまでと同様に続けることができたのです。

変わったことといえば、私がレオスの大株主ではなくなったことくらいです。この時点ですべての株式を手放していましたし、正直、このまま静かにフェードアウトして、また何か別の新しいチャレンジをするのもいいかも知れない、などと考えていました。その気持ちを、一緒に理想的な投資信託をつくろうと話していたレオスの仲間に言ったら、めちゃくちゃ怒られました。

「理想の投資信託をつくろうと言ったじゃないですか。それは出来たのですか。自分が持っているレオスの株式を失ったから、会社を辞めるのですか。結局、お金のために理想の投資信託をつくろうなどと言っていたのですか」

その説得というか、言葉に押されて、レオスを辞めるという決断は一旦、撤回することにしました。それが2009年の6月くらいだったと思います。とはいえ、そう簡単に割り切れるものではありません。それまで社長だったのが、平社員に降格され、給料も大幅に減らされました。救済の手が差し伸べられなければレオスは倒産していたわけですから、それは当然のことと受け入れましたが、しばらく耐乏生活を続けることになりました。

この時期のことでよく覚えているのが、当時、まだ小さかった子供を連れて家族旅行に行ったことです。レオスの経営が傾く前は、北海道にあるウインザーホテル洞爺のスイートルームに泊まり、美味しい食事をし、まる1日インストラクターをつけてスキーをするという家族旅行を普通にしていたのですが、平社員になった途端、まだ凍った状態のお刺身が出るような、お世辞にも綺麗とは言えない旅館に泊まるくらいの家族旅行しか出来なくなったのです。

この激変ぶりを見て、子供たちもしばらく耐え忍ばなければならないということを、実感したのではないかと思います。と同時に、私としては、このまま沈むわけにはいかないという想いを新たに抱いたのでした。

取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)