<前回まで>
投信業界のキーパーソンにロングインタビューする投信人物伝。ピクテ・ジャパンの代表取締役社長である萩野琢英氏に、これまでのキャリアを伺いながら、ピクテの入社から社長就任までを振り返って頂きました。山一證券の破綻後にいったんは離れた金融の世界に戻った萩野氏ですが、世界の富裕層の資産を守り続けてきたプライベートバンク「ピクテ」の日本法人に入社。過去の運用経験を買われ年金運用や投資信託の運用を任されることになり、独自のプライシングモデルで見出した割安、成長株のほか、公益企業への投資などを駆使し、著名ファンド「グロイン」を組成します。スイス本部でプロダクトマネジメントを任されるなど、世界中の顧客に金融商品を提供するピクテの運用の根幹に触れながら、やがて日本法人の社長に就任することになります。いったい萩野氏は日本というマーケットで、今後どのような想いを抱きながら運用をしていくのでしょうか。

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個人投資家との信頼関係を構築するため様々な接点を創出

ピクテ・ジャパンの代表取締役社長に就任して、この12月でまる11年が経過しました。第1回目の話でも触れたように、2022年7月1日に社名をピクテ投信投資顧問からピクテ・ジャパンに変更し、新しいオフィスに移転しました。今、個人投資家との交流の場も、新しく造っている最中で、この回が出る頃には、ある程度、形が見えてきているかも知れません。

私たちは、日本に資産運用文化を根付かせていくことを目指しています。そのためには、私たちが個人投資家、機関投資家、さらにはピクテ・ジャパンが運用している投資信託を販売して下さっている金融機関を含め、幅広いステークホルダーの方々から「ありがとう」と言われる会社を目指さなければと、考えています。

こうしたステークホルダーのなかでも、特に個人投資家との関係構築は、これからのピクテ・ジャパンにとっては、非常に重要であり、大きなチャレンジでもあります。

私たちは現状、個人投資家の方々にファンドを直接販売していません。基本的に証券会社、そして銀行などの金融機関を通じて、投資信託を販売しています。

したがって、個人投資家の方々と直接、接点を持っているのは販売を行う金融機関になります。どうしても運用会社は、個人投資家との間に距離が出来てしまい、それが信頼関係をなかなか構築できない一因にもなります。

ピクテ・ジャパンは新たなオフィスでカフェなどを活用してYouTube番組を撮影したりしている

そこで、個人投資家の方々と直接的な接点を持つために行っているのが、「Pictet Theatre LIVE」と称した、オンライン・オフラインの両方でご提供するハイブリット型の資産運用セミナーです。またそれ以外にも「ピクテ・スペシャル・ジャパン・ツアー」と称して、日本全国47都道府県を、弊社のストラテジストをはじめとして社員が持ち回りで訪問し、個人投資家を対象にしたセミナーを開催しています。