信頼を得るために「何でも金銭につなげるやり方は通用しない」

正直なところを言いますと、こうしたセミナーを開催した当初は、社内的にもいささか違和感がありました。運用会社は、ファンドを運用することによって、そこから得られる信託報酬を収益にしていますが、セミナーは基本的に無料開催になるので、社員としては時間を取られるものの、直接収益を得ることはできません。これまでの運用会社にはない試みということもあって、戸惑いの声があったのは事実です。

しかし、個人投資家から信頼を得られなければ、「ありがとう」とは言ってもらえません。そのためには、ニューヨークカルチャーではありませんが、何でも金銭につなげるようなやり方は通用しないと思いました。

金融の世界に長くいて分かってきたのは、やはりこの産業は「村」だということです。基本となるビジネスモデルは、株式でも債券でも投資信託でもそうですが、お客様に売買を繰り返させることによって、手数料を稼ぎ出すというものです。

私自身、長いこと証券会社にいたから分かるのですが、何かをディールするとなった途端に、どうしても人間が変わってしまうのです。そのディールが大きなものになればなるほど、そうです。それによって、自分のところに多額の報酬が入ることが分かっていますから、お客様の資産を増やすなどということは全く目に入らなくなり、お客様が損をしても良いから、とにかく大きなディールを成立させることに狂奔してしまうのです。

しかし、これではお客様、とりわけ個人の方々からの信頼を勝ち得ることはできません。大事なことは、投資家の皆さまのリターンを少しでも引き上げ、運用している資産を増やしてもらい、その一部をいただくというように、金融のビジネスモデルの考え方を根本から変えることなのです。それが私たちピクテ・ジャパンのチャレンジなのです。