ここ数年ですっかり認知度の高まった、「FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期引退)」。
FIRE実現の手段としては、一般的に「1億円貯めて年率4%で運用してリタイア」というように、資産運用収益だけで生活を賄う、“ストック型”の方法がよく挙げられます。
しかし、井戸美枝氏は大半の人にとってこの方法は現実的ではないと指摘。むしろ、面白さを感じながら続けられる仕事を見つけ、生活を見直し、給付金や補助金、リースやシェアなどお金に関する制度や仕組みを活用して、その人自身の経済的自立と望ましい生き方を手に入れる「ライトFIRE」こそが、多くの人にとって実現可能性が高く、最善の選択肢だと提案します。いわば入ってくるお金で暮らす、“フロー型”のFIREというわけです。
そんな「ライトFIRE」を叶える100の実践術を解説したのが、話題の書籍『お金がなくてもFIREできる』。 今回は同書より、序章「FIREが与えてくれるもの」、第1章「貯め方・使い方を変える!」、第2章「増やす!」の一部を特別に公開します(全3回)。
※本稿は井戸美枝著『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
緊急資金は現金と「生活費の1年分」をキープ
近年は台風や集中豪雨などの災害が目に見えて増えており、読者の中にも被災経験のある方がいらっしゃるかもしれません。一方で、コロナ禍で職を失ったり、収入が大きく減ったりした方もいることでしょう。
こうした想定外の出来事が起こると、日常生活では当たり前のように行っていたことが突然、いつも通りにできなくなってしまいます。
たとえば、台風で電気や水道が不通になってしまったら、その間は風呂やトイレはもちろん、食事の用意にも不自由します。ましてや家や仕事を失うようなことがあったら、生活を維持すること自体が難しくなります。
当面の生活を支えながら、なるべく早く元の状態に戻るためには、緊急用の資金が必要です。
事態の深刻さにもよりますが、生活を立て直すには必ず一定の期間がかかります。ですから、いざというときに備えて、現金と、生活費の半年分から1年分は預貯金口座にキープしておきたいところです。家族を養う立場であれば、1年分あると安心です。
預貯金なら比較的容易に現金化できますし、1年分が確保できていれば、環境が変わっても何とかして暮らしていくメドが立てられるでしょう。
ライトFIREに備え、今からこうしたリスクを認識し、対策に着手しておくことは大変重要です。合わせて、緊急時に利用できる制度(生活福祉資金、税金や社会保険料の支払い延長・減免など)を確認しておきましょう。
ちなみに、私は1995年の「阪神・淡路大震災」を経験したことがあり、ちょっと多めに50万円ほどの現金に加え、「2年分」の生活費を預貯金口座に置いています。
換金性を考えれば、やはり預貯金が一番です。債券や投資信託などは即日換金が難しく、手数料もかかることから、いざというときに解約を躊躇する人が少なくないようです。
POINT
1年分の生活費があれば“想定外”が起きても生活を立て直せる