読解力を鍛えるたった一つの思考法

「ドラゴン桜2」に情報提供する東大生のプロジェクトリーダーを務めた西岡壱誠氏が著した『東大読書』(東洋経済新報社)はとても面白い。この中には「取材読みで『論理の流れ』がクリアに見える」という項目があり、西岡氏は「本の内容を自分のものにするためには、『読者』ではなく『記者』にならなければダメなんです。本を読むのではなく、本を取材しなければならないんです」と指摘している。

一般的には、本を読むことは「読書」であるわけだが、読解力を考えた場合には単に「読む」のではなく、「記者」になる必要があるというのである。これは、大量の情報には触れているものの、「読解」にはいたらないことが多いデジタル時代に大切なポイントとなる。

では、読解力に重要な「記者になる」とはどのような意味なのか。これは記者の育成過程と無縁ではないので紹介しておきたい。

民放や通信社を除き、NHKや全国紙の新人記者は最初に地方勤務を経験する。そこでは、警察や役所などを担当することになる。幹部職員への夜回りや朝回りといったオフレコ取材に加え、街角などでカギ括弧付きのコメントを求めるオンレコ取材は、記者としての地歩を固める大切な経験となる。

ここで新人記者がぶつかる壁は「質問力」だ。テレビや新聞で引用するコメントを引き出す適切な質問を考えるのは当然だが、口が堅い幹部職員からのネタを狙うオフレコ取材では苦闘を強いられる。情報を漏洩すれば地方公務員法違反に問われる可能性のある職員に、その罪悪感や警戒心を抱かせることなくネタを聞き出す絶妙な質問力が問われるからだ。

彼らは単に「教えてください」と言っても絶対に漏らすことはない。ぐるりと周りを固める「頭の体操」を繰り返し、徐々に詰め将棋のように問う必要がある。

『週刊誌がなくなる日 -「紙」が消える時代のダマされない情報術 -』

小倉健一著
発行所 ワニブックス
定価 990円+税