60代社員も頑張りが評価される時代へ

定年を60歳から65歳に延長するある企業は前述の(1)のように、これまでの人事評価をご破算にして、60歳までの直近5年間の人事評価でランク付けし、上位ランクに位置づけられた人は、引き続き課長、部長としてがんばってもらう。下のランクに位置づけられた管理職は補助的な業務に就いてもらう制度にしています。当然、給与もこれまで年功で積み上げきたものがなくなり、リセットされます。

企業の人事担当者は「60歳になってから厳しく評価するのではなく、50代後半から緊張感を持って仕事をしてもらわないと、60歳以降も継続してがんばってもらうのが難しい」と、その理由を説明します。

また、65歳までの再雇用制度では人事評価もなく、処遇に反映されることは少なかったですが、(2)のように再雇用社員のボーナスに人事評価を反映させて金額を変動させる仕組みを導入した企業もあります。報酬にメリハリをつけることで社員のモチベーションを高めようというのが狙いですが、ぶら下がり意識の強い社員にとってはただ事ではないようです。

さらに着目すべきは、65歳以降の雇用です。70歳就業機会確保法では一定の基準を設けることで企業が働く人を選択できると述べましたが、(4)のように「再雇用満了後は、満了前の評価結果で優秀層のみを70歳まで雇用継続」する企業もあります。つまり評価が低い人は働きたくても契約満了で打ち切りになります。

ある企業は「まずは定年を65歳に延長することを検討しているが、ぶら下がり意識が強い社員も中には存在しているので、現在のまま、単純に70歳まで希望者全員を雇用延長することは難しい」と言っています。

こうした仕組みについては検討段階の企業も多いですが、いずれ制度化される流れだと思います。年齢軸から人物軸への転換がここでも見られます。

第3回へ続く>>
 

定年NEXT 「繋ぐシニア」24人のロールモデルに学ぶ

 

池口武志著
発行所 廣済堂出版
定価 1000円+税