定年前後の一律的な処遇を見直し

この法律の施行に伴い、70歳までの就業機会の仕組みを作った企業も徐々に増えています。働くことを希望する人は会社が設けた一定の基準をクリアすれば70歳まで働けるかもしれません。しかし、65歳以降5年間マイペースでやればいいと考えているとしたら甘い認識かも知れません。

先に触れた通り、年齢軸から人物軸への転換が進む中で、企業は60歳以上の再雇用社員を対象に、成果・実績と処遇を一致させる仕組みの構築も進めています。

定年後研究所が大手企業26社の人事担当者にヒアリングした定年後の「評価スキーム・処遇制度の見直し事例」によると、以下の仕組みを検討されていました。

(1)60歳時点で社員を再評価、ランクに応じた職務付与と処遇にリセット

(2)再雇用社員を対象に、人事評価に応じた給与等金額変動を導入

(3)50代後半の人事評価結果を再雇用以降の給与水準に連動

(4)再雇用満了後は、満了前の評価結果で優秀層のみを70歳まで雇用継続

(5)60歳時点で「フルタイム正社員」と「パートタイム嘱託社員」をコース選択

これまでは、仕事は現役社員の邪魔にならない程度の軽作業、給与も60歳時点の7割程度と全員一律の処遇で運用するのが一般的でした。しかし、この仕組みは従業員のモチベーションが低下する一方、生産性も向上しないという反省もあり、このような見直しを検討している企業が増えています。厳しく感じる向きもありますが、努力を丁寧に評価してもらえるわけですから、むしろ「チャンス」と前向きにとらえたいと思います。