千里さん(仮名、70歳男性)は3つの店舗を経営する飲食店のオーナー。20年共に生活している同性パートナー(60歳)はフリーランスのライターで、それなりに仕事はあるものの千里さんほどの経済的基盤がないことが心配。最近は専ら、事業を誰に引き継ごうか、どのようにしたらパートナーに財産を分与できるのか、と思案しています。

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遺言

千里さんが苦労して築いてきた財産は、このまま何もしなければ民法の定めに従って法定相続人(千里さんの場合は姉と弟、またはその子)に渡ることになります。購入した家も相続の対象となるので、そのままパートナーが住むことは難しい可能性が高くなります。千里さんの意思を表明するためには、遺言書を正しく残すことが有力な手段となります。

「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」が主な手段となりますが、それぞれ定められた形式を守らないと無効になってしまうので注意が必要です。

自筆証書遺言は自分で作成でき、2020年から法務局が原本を保管してくれる遺言書補完制度が始まったことで紛失や隠匿が防止できるほか、遺言書があること自体を遺された人が確認しやすくなりました。ただし、作成時の判断能力や形式を第三者がチェックしているわけではないので、形式上無効と判断されたり、有効性を巡って争いになってしまう可能性があります。