久我貴彦さん(仮名)は自動車部品メーカーのエンジニア。定年後も勤務先の継続雇用制度を利用し、現役時代と同じ部署で働いています。同い年の妻、陽子さんも部品メーカーの技術職として定年後も仕事を続けています。
週末には貴彦さんの愛車レクサスを駆って東海地方の地方都市を訪れ、NPO(特定非営利活動)法人による町の経済再生プロジェクトをサポートしているという活発なご夫婦。共にとても60代には見えない若々しさとはつらつとした生き方は、これから定年を迎える職場の後輩たちの羨望の的でもあるようです。
お子さんのいない技術系共働きカップルだけに、リタイア後のライフプランも完璧と思いきや、「3年前に妻の多重債務が発覚するという“家庭内有事”がありまして……。あわや老後破産かという大ピンチでした」と貴彦さんが振り返ります。
そもそも、一時期は夫婦で年収2000万円近かったというパワーカップルが、なぜ定年直前に老後破産の危機に直面したのか。そして、その危機からいかにして脱したのか――。久我家の家庭内有事の顛末を、貴彦さんが話してくれました。
〈久我貴彦さんプロフィール〉
東京在住
61歳
男性
会社員
妻と2人暮らし
金融資産2000万円(現在)
我が家は、少し前の言い方をするなら「DINKS(Double Income No Kids、子どものいない共働き夫婦)」です。私と妻の収入を合わせれば年間で2000万円近くなっていたはずで、そんな我が家がまさか老後破産の危機にひんしようとは夢にも思いませんでした。
妻は大学の同級生だったこともあり、結婚後も対等の関係を保ち、互いの生き方を尊重してきたつもりです。それぞれ収入があったので自分が稼いだお金は自由に使うのが当然と考え、その結果、私は高級車を何度も買い替え、毎週のようにゴルフに出掛けるなど散財をし、妻は妻で、趣味の茶道で高価な道具をそろえたり、京都まで行って着物をあつらえたりとぜいたくな暮らしをしてきました。