つみたてNISAは「最初の1杯」で、肝心なのは「2杯目以降」
とはいえ、親近感と期待値の大きさゆえの不安も残る。年初以降の不安定な相場環境を受け、SNS上も一時期ほどの「猫も杓子も」状態ではなくなったが、崇拝的な米国株の集中投資は決して推奨できる投資行動ではない。本連載で以前にも指摘した通り(米国一辺倒で大丈夫? 実は歴史の浅い米国株式インデックスファンド)、日本における米国株式インデックスファンドの歴史は非常に浅く、米国のベビーブーマー世代のように、これらのファンドで財産を築いたと言える長期資産形成の第1期生はまだいない。
筆者は、つみたてNISAはいわば「最初の1杯」、あるいは、「乾杯のための1杯」のようなものだとセミナー等で説明している。肝心なのは「2杯目以降」、つまり、つみたてNISAの枠を超えた課税口座での投資である。この段階では、資産形成で達成したいことをもう少し明確にし、自分の好みや意志を商品選びに反映していく必要がある。
そのためには、投資先の選択肢という引出しを増やすことが重要だとも説明している。例えば、市場の不透明感が漂う今のタイミングで投資額を増やすなら、虎視眈々とタイミングを狙って米国株のインデックスファンドに追加投資するよりも、インフレ対抗策としての金(ゴールド)など実物資産のほか、高配当バリュー(割安)株などに目を向け、分散投資にかじを切るという方法もある。資産形成で重要なのは、常に高いリターンを追求することではなく、安定的にリターンを積み重ねていくことだ。
暖簾をくぐり「最初の1杯」を注文する土壌ができた今、これから確実に需要が高まるのは「2杯目」以降の選択肢と、そこに付随するアドバイスである。繰上償還のリスクが小さく、長期にわたって安心して積み立てられるかという、サステナビリティの面も、今後はファンド選択の上でより重視されるだろう。繰り返しにはなるが、何でもコストで片付けるのではなく、投資家に何が求められているのか、「1兆円インデックスファンド」が誕生した今こそ深く考えるべきだ。