高齢者の住宅事情
2000年に介護保険制度が導入される前は、家で生活することが難しくなった高齢者の多くは医療機関に入院し、そこで寝たきりとなって最期を迎えることが多くなっていました。介護保険制度では、できるだけ住み慣れた地域で最期まで過ごせることや、リハビリテーションや自立支援に重点が置かれています。
国土交通省の資料(※)によると、自宅で最期まで過ごしたいという希望を持つ高齢者が多い一方で、昔から住んでいる自宅は老朽化やバリアフリーでないなどの課題を抱えていると指摘されています。
身体機能が低下して車いすや介助が必要になっても、自宅にとどまりたい人65.1%のうち、自宅を改修する意向がある人は15.8%にとどまっており、問題があると分かっていても自宅の改修のような大きな決断はしにくいことがうかがえます。実際に、何らかの疾患で入院し、治療が終わっても、家の環境が生活に適さないために退院が難しくなってしまうような例はよくあります。
「住み慣れた自宅」という言葉の響きは美しいですが、自分の状態が変わってしまうと、自宅は必ずしも(そのままの状態では)住みやすくないというのが現実です。
※高齢期の居住の場とサービス付き高齢者向け住宅の現状に関する調査報告