目標未達のまま尻すぼみの黒田バズーカ

しかし、異次元緩和を導入したにもかかわらず物価の上昇は思わしくありません。2012年に94.5だった「消費者物価指数(2020年基準)」は2021年に99.8まで上昇しますが、これは年率0.6%のインフレにとどまります。2021年はむしろ0.2%のマイナスになってしまいました。

【消費者物価指数(変化率)の推移】
2017年:+0.5%
2018年:+1.0%
2019年:+0.5%
2020年:±0%
2021年:▲0.2%

出所:総務省統計局 e-Stat 2020年基準消費者物価指数

2%のインフレ目標は道半ばですが、日本銀行は2021年にETFの買い入れを大きく減少させています。前年は買い入れ目標を年間12兆円にまで増額し約7兆1400億円のETFを購入しましたが、2021年は約8700億円しか買い入れていません。これは異次元緩和以前とほぼ同じ水準です。

【日本銀行によるETF買入額の推移】


出所:日本銀行 指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および不動産投資法人投資口(J-REIT)の買入結果ならびにETFの貸付結果

ETFを通じた株価の買い支えはその影響力から「黒田バズーカ」とまで呼ばれていましたが、今やその面影はありません。

今後も株価が大きく下落する場面では日本銀行によるETF買い入れが行われるかもしれません。しかし以前ほどの規模は期待しにくいでしょう。日本株の実力が試されています。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。