なぜインフレを目指す?「デフレスパイラル」を知る

黒田総裁が異次元緩和を導入した背景にはインフレ(物価上昇)目標があります。日本銀行は2013年1月に2%のインフレを目標として設定しており、黒田総裁はその早期達成を目指しそれまでにない強気の金融緩和に踏み切りました。

そもそも日本銀行はどうしてインフレを目指すのでしょうか? 理由はデフレ(物価下落)が経済にとって悪影響が大きいためです。

物価は企業にとって商品の販売価格です。つまり物価が下がるということは企業の売り上げが下がるということに他なりません。

売り上げはその企業の従業員にとって給与の源泉です。売り上げが下落している中では給与の上昇は望めないでしょう。そして給与が上がらないと消費は増えないため、さらに企業の売り上げが下落する要因となってしまいます。

企業からすると、デフレのもとでは、製品やサービスの価格を引き上げることができないため、売上や収益は伸びません。そこで、人件費や設備投資をできるだけ抑制することになります。家計においては、賃金が上がらないため、消費を抑えようとします。家計が消費を抑えると、企業は、消費を取り込むために、製品やサービスの価格を引き下げざるを得なくなります。 

出所:日本銀行 なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか──日本商工会議所における講演──

このようにデフレをきっかけに経済が連鎖的に縮小していく現象を「デフレスパイラル」と呼びます。日本は2001年3月に政府の月例経済報告においてデフレを認定し、その後も長らく物価の低迷から抜け出せていません。日本の景気が低迷している原因の1つと考えられています。

日本銀行はデフレから脱却し経済を好転させるためインフレを目指しているのです。