投信を減らす制度はあるものの、誰も得をしない残念な裏事情

では、逆に投資信託の本数を減らすことは出来ないのかどうかを考えてみましょう。現状、一定の条件下で「投資信託の併合」が認められており、これを用いて小規模投資信託同士を併合させることは、制度上も認められているのですが、結局、これを実行したとしても、「誰も得しない」という現実的な問題に直面してしまいます。投資信託を併合させるには、現在の保有者全員に事前告知をし、書面で同意を取らなければならないのですが、それにかかる手間やコストを考えると、販売金融機関も含めて全体のモチベーションが上がらないというのが現実のようです。

また、ファンドの併合が困難なら繰上償還させるという手もありますが、これも併合と同じで、やはり「誰も得しない」という問題に直面します。繰上償還させれば、その資金は確実に流出します。流出すれば、少額でもこれまで取れていた信託報酬が受け取れなくなりますし、繰上償還も事前告知が必要ですから、コストばかりがかかってきます。明らかに収入が減るのに、コストと手間ばかりがかかることを、営利企業である投資信託会社や販売金融機関が積極的に行うわけがない、ということです。

純資産残高が非常に少ない、もう運用されているのかどうかも分からない投資信託が生き残っている背景には、このようにさまざまな要因が複雑に絡んでいるのです。