投信会社の増加がファンドの増加要因に

では、なぜここまで投資信託の本数が増えてしまったのでしょうか。最も単純な理由としては、投資信託会社の数が増えたことです。現在、投資信託協会の正会員として登録されている投資信託会社の数は109社ですが、バブル経済がピークを付けた1989年当時は12、3社程度だったと記憶しています。当時に比べて今の投資信託会社の数は10倍近くにまで増えているのですから、運用されている投資信託の本数が増えるのも当然ではあります。

ただ、最も根本的な問題は、販売金融機関に販売手数料を落とすための回転売買が頻繁に行われていたからです。例えばAファンドが新規設定されるにあたり、100億円の資金が集まったとします。販売手数料が2%だとしたら、販売しただけでざっと2億円の売上が販売金融機関に落ちます。そうしたら、今度はこの100億円の大部分を解約させて、また新しく設定されるBファンドに乗り換えさせるのです。

Aファンドから70億円の解約が発生し、その資金が全額、Bファンドの買付に回ったとします。Bファンドの販売手数料が2%だとしたら、1億4000万円の売上を得ることが出来ます。AファンドとBファンドの合計で3億4000万円の手数料収入が計上されます。日本の投資信託の平均保有期間は2年半程度と言われていますが、販売手数料を稼ぐことに熱心な販売金融機関の中には、買って1年も経たないうちに新規設定ファンドに乗り換えさせるセールスを行っているという話もあったくらいです。