投資信託協会の直近のデータを見ると、日本国内で設定・運用されている公募型投資信託の本数は、2021年12月末時点で5923本もあります。一時期は6121本あったので、多少は減りつつあるとも言えるのですが、2004年5月時点では2526本だったことからすると、この17年間で大きく本数が増えたことになります。

純資産総額10億円以下の投資信託は収益に貢献してない現実

とはいえ、5923本ある投資信託のすべてがしっかり運用されているのかどうかという点については、やや疑問符が付きます。なぜなら、大半の投資信託は純資産総額の規模が非常に小さく、これを運用し続けたとしても収益が赤字になりかねないからです。

銀行や証券会社の窓口を通じて購入できる公募型投資信託のうち、給与天引きで購入するミリオンをはじめ財形株投、ラップ口座専用、DC専用、ETFを除いた本数は4467本ありますが、このうち純資産総額が30億円未満の投資信託は、2021年12月末時点で2522本もあるのです。また、この2522本のうち、純資産総額が10億円に満たない投資信託の本数は、1496本もあります。

純資産総額が10億円に満たない投資信託は、それを運用している投資信託会社にとって、ほとんど収益に貢献していないと思われます。例えば年間を通じて純資産総額の平均が5億円で、信託報酬率が年1.5%の投資信託があるとしましょう。この投資信託にもたらされる信託報酬の額は、年間750万円です。

信託報酬の率が年1.5%といっても、その全額を投資信託会社が受け取れるわけではありません。このうち0.1%が受託銀行の取り分になり、さらに残った1.4%のうち半分の0.7%は、販売金融機関の代行手数料分です。

したがって投資信託会社が受け取れる信託報酬は、率にして年0.7%ですから、金額にすると350万円程度になってしまいます。投資信託会社が信託報酬を受け取る名目は、「信託財産の運用、運用報告書等各種書類の作成、基準価額の算出等の対価」ですから、これらの作業にかかるコストから考えると、1年で350万円という信託報酬では、恐らく採算割れになるのではないかと、思わず心配してしまいます。