日本証券業協会が2006年以降、毎年行っている「個人投資家の証券投資に関する意識調査」は、インターネットを通じて行われているアンケート調査です。調査対象は、日本全国の20歳以上の個人投資家5000人です。総ページ数165ページという、かなり読み応えのあるレポートで、内容も株式や投資信託、公社債の保有状況といった基本情報をはじめ、「損失の繰り越し控除について」、「デリバティブ取引について」、「相続について」、「NISAについて」など、多岐にわたっています。
投資信託を選ぶ理由は「安定性やリスクの低さ」がトップに
一般的に個人同士でお互いにどのような投資をしているのかその中身について話し合うことは少ないと思います。それだけに隣の人物がどういう投資(資産運用)を行っているのか気になるという人は、このレポートに目を通してみてはいかがでしょうか。この意識調査が網羅している項目は非常に多いので、すべてを取り上げることは出来ませんので、Finasee編集部として注目した項目を深掘りしていきたいと思います。以下の図表として転載した「投資信託購入時の重視点」をご覧ください。
この意識調査では、投資信託購入時の重視点について、性・年代別、年収・投信時価総額別というように、いくつかの観点から複数回答ありで回答比が掲載されています。投資信託を選ぶにあたって何を重視しているのかということが、これを見ることで分かります。全体の有効回答数は2986人です。
全体の数字から説明していきますが、まず注目したいのが投資信託を選ぶにあたって「成長性や収益性の高さ」と回答した割合が全体の51.0%であるのに対し、「安定性やリスクの低さ」が57.7%と上回っている点です。
そもそも投資信託は、預貯金とは全く異なる金融商品です。預貯金であれば、元本の価格変動リスクはありませんし、低いながらも安定した利息収入が得られます。対して投資信託は、元本も収益性もファンドによってバラバラですし、常に収益が得られる保証はなく、投資先のマーケットが下げれば、元本割れリスクが生じる金融商品です。ただし、投資先マーケットが成長すれば、ファンドの収益性は預貯金など比べ物にならないくらい高くなります。
このように、投資信託の根本的な商品特性から考えると、「安定性やリスクの低さ」の回答比が、「成長性や収益性の高さ」の回答比を超えるのは、いささか疑問です。リスクよりも安全を重視したいという考えもありますが、投資信託という金融商品の本質的な意味や中身を理解できていない個人が多いからこそ、このような結果につながりやすいとも言えるのでしょう。