安定と低リスクが生んだいびつな仕組みの投資信託
また、投資信託に「安定性やリスクの低さ」を求める個人が多いからこそ、いびつな仕組みを持った投資信託が新規設定されるとも言えます。よくあるのが「リスク限定型投資信託」と呼ばれる投資信託です。ファンドによって仕組みは若干異なりますが、たとえば「基準価額が上昇するに伴ってトリガー価格が上昇。トリガー価格は当初基準価額に対して90%だが、基準価額が一定水準まで上昇するとトリガー価格も引き上げられる。基準価額が大きく下げたとしても、トリガー価格を割り込むことはない」というものです。
この説明を聞いた範囲では、恐らく投資信託としての値上がりが期待できる一方、基準価額が下落するような場面でも、一定水準以下には値下がりしないという点でリスクが限定されており、投資初心者にとって最適な商品と思うのではないでしょうか。実際、この手の投資信託が次々に設定され、一時は人気商品となっていました。初めて投資信託を購入する人にとって一番気がかりなのは、マーケットが急落して損失を被ることです。そういう人たちにとって、「リスク限定」という言葉は非常に心地よく響くのでしょう。
でも、この手の「仕組み」には必ず罠があります。リスク限定型投資信託の問題点はさまざまなところで語られているので、ここではあまり文字数を割きませんが、リスクを限定するために組成されている保険があることから、コストが割高になるだけでなく、その保険を出来るだけ発動させないようにするため、基準価額がトリガー価格近辺まで下落すると、ファンドに組み入れられている資産のうち株式や債券などが売却され、大半がキャッシュでの運用になってしまうのです。
こうなると、今度はマーケットが回復しても、それに追いつけるだけのリターンを実現できなくなりますし、しかもリスクアセットの組入比率を高められるだけの判断も出来ず、結局、キャッシュを握ったまま基準価額が回復しない、という状況に陥ってしまうのです。