「予想分配金提示型」との上手な付き合い方

以上の通り、今年2022年は株式市場において金融相場・需給相場からの転換が不可避であるのに加え、為替の面でも昨年のような追い風を受けることは難しいとみられる。決してバラ色の投資環境とはいかない中、上値を追うだけでなく、どのように市場のリスクと向き合うかを考えるよいタイミングと捉えたほうがよいだろう。もちろん積立を行っている場合は、動じることなく継続するというのが鉄則だ。

注意したいのは、昨年までのような上昇相場で人気を博した投資信託との付き合い方である。ちょうど1年前に本連載(意外に知らない分配金の仕組みと、新潮流「予想分配金提示型」とは?)でも取り上げた、予想分配金提示型について最後に触れておきたい。投資信託の分配金(収益分配金)とは、投資信託が決算を迎えた後、受益者(投資信託の保有者)が保有する口数に応じて支払われるお金のこと。「予想分配金提示型」の投資信託は、この分配金の額が基準価額の水準に応じてあらかじめ決まっている点に大きな特徴がある。

多くのファンドは、決算日(計算期末)の前営業日の基準価額を参照し、この値が「1万1000円以上1万2000円未満なら200円(1万口当たり。以下同)」、「1万2000円以上1万3000円未満なら300円」といった具合に、分配金のレンジが決められている。従来の定期分配型と比べ、分配方針の透明性が高く、投資家にとっても分配金の見込み額を事前に把握できるという利点がある。

昨年は、右肩上がりの基準価額に比例して毎月300~500円程度の高い分配金を支払うファンドが人気を博した。しかし、足元では基準価額の下落に伴い、月々の分配水準も100円前後まで低下している。数カ月の間に元本が目減りするだけでなく、分配金が3分の1以下となったことに驚いた方も多かったと思われるが、それだけ価格変動の大きな資産に投資しているということを認識してほしい。言い換えれば、月々数百円単位の分配金の原資を捻出するためには、相応のリスクを負う必要があるということだ。

なお、投資効率の観点でいえば、決算回数は少ないほうがよい。予想分配金提示型の多くは同一シリーズで、決算回数の少ないタイプも展開されている。同じ投資方針を掲げて運用している以上、リスクの水準は、予想分配金提示型と決算回数の少ないタイプで変わりはない。

しかし、分配金を都度払い出さずに、株式の配当や売買益を再投資に回して資産の成長を目指したほうが投資効率はよく、長期投資の観点でも理にかなっている。これまで受け取ってきた分配金を使い切れていなかった、あるいは、実は明確な使い道がなかったという場合は、決済回数が少ないタイプも検討してほしい。