2021年に投資信託市場を席巻した米国株が揺れている。

株式市場では一般的に、直近または52週の高値から終値が10%下落すると「調整局面」、同じく20%下落すると「弱気相場」に入ったと定義される。中でも、ハイテク株が中心のナスダック100指数は、米国金利の上昇が嫌気され、いち早く調整局面に入った。かねて指摘されてきた米国ハイテク企業の割高感は、低金利環境下でこそ許容されていたが、金利上昇に伴い、風向きが大きく変わったというわけだ。

ただし、これは決して想定外の動きというわけではなく、むしろ十分に想定されていた。筆者が本連載で米国一辺倒の投資に警鐘を鳴らしてきたのは、「いつかは来る」とみられていた調整局面で、積立をやめるなどの不合理な投資行動を起こさないためである。「損失の苦痛は、利益を得たときの喜びの2倍強く感じられる」というのは、行動経済学でよく知られた人間の不合理な行動の1つである。

長期投資を前提とした時、米国株が有望な投資先であることは間違いない。積立にしてもバイ&ホールド戦略を取るにしても、投資資金に全く手を付けることなく、10年単位の時間を充てることができるなら、足元の状況を気にする必要はないだろう。「20%程度の下落なんて全く気にならないし、不安定な環境が数年続いても大丈夫」という場合も同じだ。

しかし、年初からの下落に少しでもヒヤリとした、あるいは、米国株に対して「イメージしていたものと違う」と思ったなら、長期投資を前提としていても、足元で何が起きているかは最低限押さえておいたほうがよいだろう。マーケットのメカニズムを理解することは、先述した不合理な投資行動を回避することにつながる。

金利上昇と「金融相場」から「業績相場」への転換点

まずは、金融緩和や低金利に支えられて株価が上昇する「金融相場」がいよいよ終わりを迎え、企業の業績拡大によって株価が上昇する「業績相場」へ移行する事実を受け止めることが重要だ。金利の上下が株価に影響する理由から、ざっくりとご説明しよう。

株価の算出根拠となる企業価値は、将来獲得できるであろうキャッシュフローを、金利(これを割引率と呼ぶ)で割ることで求められる。キャッシュフローと発行済み株式数に変化がない場合、金利が上昇すると企業価値は低下し、理論株価も低下する。これまで成長期待によって株価が押し上げられてきた米国のハイテク企業には割高感があった分、足元の金利上昇に株価が敏感に反応してしまったのである。