改正ポイント3:上場株式の配当等の課税方式
上場株式等の税制は、これまで様々な優遇策が設けられてきました。とりわけ上場株式の配当等の課税制度は、節税策として注目されています。しかし、今回の改正でメスが入りました。
改正前:上場株式等の配当等への課税方式は選べる
上場株式の配当金や上場投資信託の分配金には、所得税と住民税がかかります。この2つの課税方式は本来、統一されるべきものです。しかし「貯蓄から投資へ」という当時の政府の強い要請から、2017年度税制改正で、所得税と住民税で別々の課税方式を選択できるようになりました。
現在、源泉徴収ありの特定口座で運用していれば、所得税も住民税もそれぞれ「申告不要(源泉徴収で課税関係が終了)」「総合課税で申告(所得税は累進税率、住民税10%)」「分離課税で申告(所得税15%、住民税5%)」から自由に選べます※2。
※2 ただし、所得税の2.1%相当の復興特別所得税も別途課される。
税率の差や“国民健康保険税の算定基準である総所得金額になるか否か”をうまく活用し、上手に節税する人もいたほどです。
改正後:所得税と住民税で課税方式を統一
しかし今回の改正により、別々の課税方式を選べなくなりました。「所得税で総合課税を選んだなら住民税でも総合課税を」「所得税を申告不要とするなら住民税も不要に」と、住民税は所得税の課税方式と一致させることとなったのです。
この改正は2024年分以降、適用されます。上場株式等の配当所得を総合課税で確定申告するなら、住民税も5%ではなく10%かかるようになります。また、総合課税であれ分離課税であれ、いったん確定申告したら、それまで上手に節税していた人も国民健康保険税や医療費の窓口負担が増えることになります。
源泉徴収ありの特定口座で運用している方は、慎重に判断しなくてはなりません。
最後に
今回の税制改正で特に注意したいのが「条件」です。住宅ローン控除でいうと、改正前は所得額が2000万円台の人でも利用できました。しかし、今年以降は利用できなくなります。
なじみのある税制ほど、うっかり間違いをしやすいものです。活用の際は、その都度確認しましょう。