企業年金をどう受け取る? 出口戦略を立てるために、受け取りパターン別メリット・デメリットを把握しよう

定年退職をする時に会社から受け取るお金として、退職一時金、DB、企業型DCがありますが、どの制度を導入しているかはそれぞれの企業によります。また、DB一つとっても受け取り方は企業ごとに異なります。

1年後に定年退職となる川田さんも、会社からどう受け取るか決めておくように言われたのですね。川田さんの会社は、DB、企業型DCがあり(DBDC併用とも呼ばれます)、DBは、一時金、終身年金、一時金と終身年金、という受け取り方ができるうえ、65歳まで据え置きができるとのこと。

いっぽう、企業型DCは会社から拠出してもらって自分で運用するので、会社から拠出された時点で「受け取った」と思いがちですが、実際には、口座から引き出す時点で「受け取った」とされます。企業型DCを退職一時金として受け取る際は、DBの受け取り方も含めて“トータル”で考える必要があります。

まず、DBの受け取り方別メリット・デメリットを整理していきます。

DBを年金で受け取るメリット・デメリット

川田さんの会社の企業年金は、終身年金で受け取ることができます。また、65歳まで据え置くと2.5%の利率で運用され、一定期間年金が増額されるとのこと。

川田さんの場合は、一生涯、公的年金とは別に、約13万円/月の企業年金が受け取れる予定です。

税制面では、DBにも公的年金控除が使えます。川田さんは継続雇用を希望していますが、企業年金は在職老齢年金のように収入によりカットされる心配もありません。

しかし、公的年金控除という税制優遇はあるものの、DBも公的年金も“所得”として課税対象です。つまり年金を受給する生活になれば年金所得に対して所得税・住民税の他、介護保険料・国民健康保険料(75歳以降は後期高齢者医療保険料)等が掛けられるので、年金が増えれば同時に保険料が高くなります。よって、安定的に収入が得られるのは良いのですが、税金や社会保険料も増加するのは避けられません。

DBを一時金で受け取るメリット・デメリット

では、60歳で退職一時金として2500万円受け取ったとしましょう。

例えば、38年の勤務年数があるとしたら、退職所得控除は800万円+70万円×(38-20)年=2060万円となるので、退職所得(2500万円-2060万円)×1/2=220万円にしか課税されません。国税庁の計算式に当てはめると、220万円×10%-9万7500円=12万2500円、さらに2.1%を加えた12万5072円が所得税・復興特別所得税として源泉徴収されます(令和19年12月31日まで、所得税を納税するに人は、併せて復興特別所得税も納税する義務があります)。

他に住民税220万円×10%=22万円も納めますが、他の所得と合算されず、源泉徴収されて課税関係は終了となるため、確定申告の必要もありません。また、健康保険や介護保険等の対象にもなりません。

しかし、計画的な取り崩し、そして資産寿命を延ばすことも必要になるでしょう。焦って投資をしないことが重要です。使い方を間違えると“取り返しがつかない”点が、一時金で受け取る場合の最大のデメリットでしょう。

もう一つの年金:企業型DC 

ところで、川田さんは企業型DCにも加入しています。退職までに14年加入することになり、この分が500万円ほどになりそう、とのこと。

川田さんの会社は、企業型DCへの加入は規約で60歳までとされていますね。企業型DCの受け取りの時、一括で受け取る場合には退職所得控除が使えます。川田さんの企業型DCの退職所得控除額は40万円×14年=560万円と計算します。この金額までは税金が掛かりません。

ただし、同じ年にDBも企業型DCも一時金で受け取る場合、注意点があります。