DBと企業型DC、同じ年に受け取ると合算される点は注意!

仮に、定年退職の年にDBも企業型DCも一時金として受け取ったとします。

その場合、DBと企業型DCの受取額、勤続年数を合算します。ただし重複期間は考慮されません。川田さんの場合、企業型DCの加入期間は企業年金の期間にまるまる重なってしまっています。受取金額は合算されても退職所得控除額は変わらないため、結果的に企業型DCの金額分の所得が増えてしまいます。

また、退職一時金を受け取る前年以前4年間(企業型DCを受け取る場合は前年以前14年間。令和4年4月からは前年以前19年間)に別の退職一時金を受け取っていたら、後で受け取る退職金の退職所得控除には、前に受け取った退職金の勤続期間と重なる期間分の退職所得控除は使えない、というルールも存在します。

これがどういうことか。どうすれば控除を活かせられるのか――先にDBに加入していて、後から加入した企業型DCの重複期間が14年ある川田さんの場合はこうなります。

●退職時(60歳)に企業型DCを一時金で受け取る場合
DBを65歳まで据え置いて一時金で受け取ると、退職所得控除をそれぞれの加入期間分使えます。

●退職時(60歳)にDBを一時金で受け取る場合
川田さんの場合はDBと企業型DCの加入期間が重なっているため、企業型DCも一時金で受け取る場合、退職所得控除に使える期間は60歳以降の企業型DC加入期間のみです。60歳前の企業型DCの退職所得控除を使うには、DBの受け取りから15年空ける必要があります。ところが、現在の法律では企業型DCは70歳までに受け取らなければなりません。制度改正により、令和4年4月からは受け取り上限年齢は75歳までに延びますが、同時に、前に退職一時金を受け取った時から空ける期間も15年から20年に延びるため、企業型DCの退職所得控除を全期間使えません。

よって、DBも企業型DCも一時金で、税負担を少なく受け取りたいのであれば、先に企業型DCを受け取るのが良いでしょう。

さらに、川田さんの場合はこの2択以外の選択肢もあります。

川田さんのDBは、一部を退職一時金、残りを年金という“ハイブリッド”形式で受け取ることもできるため、「一時金を退職所得控除内で」と考える作戦です。企業型DCも同様です。

例えば、2500万円の75%を一時金にすると1875万円で、退職所得控除2060万円に収まります。残金を年金で受け取ると、月に約3.3万円になり、年間約39.6万円。川田さんは、退職後も継続雇用で働く予定ですよね。公的年金控除により非課税となる年金額は、65歳未満は60万円、65歳以上は110万円までです。65歳までは公的年金は受け取らないので、65歳になるまではDBを非課税で受け取ることができます。公的年金の受け取りが開始されれば、公的年金と企業年金が合算されて課税所得が計算されます。使い切れない控除枠で、企業型DCの受け取りを考える――というわけです。