「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れない人も「経過的加算」を受け取れるのは不思議!?
さらに経過的加算を深掘りすると、こんな疑問にも行き当たるはずです。
経過的加算は老齢厚生年金の定額部分と老齢基礎年金の差額に相当する部分であるとするなら、定額部分を受け取れない人にも経過的加算がつくのはなぜか?
1961(昭和36)年4月2日以降生まれの男性、1966(昭和41)年4月2日以降生まれの女性には「特別支給の老齢厚生年金」はなくなり、「本来支給の65歳年金」となるため、定額部分は発生しません。しかしながら、そうした方にも65歳以降も経過的加算がプラスされるのはなぜ?という疑問が残ります。
定額部分が支給されない人にも経過的加算が支給されるのは、経過的加算が“厚生年金保険の加算”であり、老齢厚生年金の定額部分に相当する額とされているためと考えられます。つまり、厚生年金保険の加入期間のある人には老齢厚生年金の額の計算の“特例”として、“当分の間”、定額部分から老齢基礎年金を控除した差額を加算している、ということです。
なお、現在、先ほどのBさんのように経過的加算が多く支給される人は次のような人が主に該当します。
・国民年金の加入期間(第1号被保険者・第3号被保険者)がある
・国民年金の猶予(学生納付特例含む)、未納期間がある
・転職等で年金加入の空白の期間がある
定額部分と老齢基礎年金の差額を埋めることが経過的加算のメインであるならば、「特別支給の老齢厚生年金」の支給が終了する頃には制度変更に関する何らかのアクションがあるかもしれません。
一方、厚生年金保険の加入期間は20歳前、60歳以降もあるため、今後は20歳以降60歳未満の厚生年金保険期間が480月加入していない人向けの加算となる可能性も考えられます。
厚生年金保険の加入期間が長いために、経過的加算が少ない人はモヤモヤするかもしれませんが、年金額を多く受給することを考えるなら、厚生年金保険に長く加入し続けるほうがAさんとBさんの例から見ても得であることは言わずと知れたことです。
働き方の多様性により、1つの会社に定年まで勤め上げるという考え方は薄れています。まず全ての人に対応する老齢基礎年金はセイフティーネットであり、さらに公的年金をリスクに備える保険と捉えるならば、上乗せの老齢厚生年金は報酬額を増やして長期間加入することが一番の備えになる、と言えるでしょう。
前回の加給年金と同様、年金は「トータルで考えること」これが大切です。