「ついに」か「ようやく」か……。投資信託業界で長年黙認されてきた「一物多価」問題に一歩前進の兆しが見えてきた。去る10月19日に日本経済新聞が報じたところによると、みずほフィナンシャルグループ(FG)は、グループ内で扱う同じ指数に連動する日本株インデックス型ファンドの信託報酬を、最低水準の0.50%(税抜、以下同)に統一した。

新しく設定されたファンドほど信託報酬が低い事実

実質的に同じ運用をしているファンドであるにもかかわらず、信託報酬にバラつきがあるという、いわゆる「一物多価」問題は、金融庁が今年6月に公表した「資産運用業高度化プログレスリポート」でもはっきり指摘されていた。運用手法に差がつきにくいインデックス型ファンドの場合は特に、信託報酬率の差が運用成績の差に直結する。したがって、同じインデックスへの連動を目指すファンドなら、理論上、信託報酬は低いに越したことはない。

実はみずほFGに限らず、運用会社と販売会社の多くは「一物多価」問題を抱えている。筆者が所属するネット証券も例外ではない。より直近に設定されているファンドほど信託報酬率は低い傾向にあるため、運用会社側が既存ファンドの信託報酬を引き下げるか、販売会社側が取り扱いを止めない限り、「一物多価」現象は生じてしまう。取り扱い本数を増やしていく上で、避けることができない現象とも言えよう。

近年は「(信託報酬率)業界最低水準」を謳うインデックスシリーズの台頭により、事実上、信託報酬の引き下げ競争に終止符が打たれつつある。最終的な焦点は、信託報酬率が高いままの既存ファンドをどうするのかという点に移っており、それが冒頭のみずほFGの対応につながっているわけだ。