特色なき投資信託会社は淘汰される時代に

2014年1月からNISAがスタートしたことも、投資信託の運用本数の増加につながりました。さらに、個人の間でインデックスファンドが人気を集め、投資信託会社がローコストファンドの新規設定に血道を上げたのも、直近で運用本数が増加した要因と考えられます。それと同時に、かつてもそうだったようにファンドマネジャーの運用管理本数の増加という負の側面が出てきました。

加えて、これは現在、運用されている投資信託の純資産総額を調べると分かるのですが、純資産総額が10億円、あるいはそれ以下の数億円程度という小規模ファンドがたくさんあることも負の側面かもしれません。この手の小規模ファンドがどうなっているのかと言うと、大半は運用されていないのも同然です。運用されていないと言うのは語弊があるかも知れませんが、少なくともそのファンドの純資産規模を大きくするために運用成績を向上させるといった努力、あるいはそのファンドに資金を集めるための営業促進などはほとんど行われていません。

そもそもそこまで純資産の規模が小さくなった投資信託は、運用の手間暇をかけるだけ赤字要因になりますから、投資信託会社としては何もせず、そのうち保有者が解約して抜けていってくれることを祈っているわけです。

もちろんマーケット要因で運用成績が急に良くなることもありますが、それはあくまでも偶発的な要因によるものであり、マーケット環境が悪くなれば、再び成績は低迷してしまいます。純資産総額の小さいファンドは、その程度の扱いになってしまうのです。

ここ最近、運用本数が徐々に減っているのは、さすがにこのような運用されているのかどうかも分からないようなファンドは、繰上償還させようという動きが出てきたからです。併せて、運用方針が同じファンドを1つにする投資信託の併合も行われるようになりました。そもそも1つの投資信託会社で、運用方針が同じファンドを複数本運用していること自体が、非効率の極みです。

かつては新規のファンドをたくさん設定し、それによって手数料を稼ぐという動きがあったため、1つの投資信託会社で似たようなコンセプトの投資信託が次々に新規設定されたのですが、「貯蓄から資産形成へ」の流れを確たるものにするには、投資信託の商品構成をシンプルなものにする必要があります。ファンドの本数があまりにも多いと、特に投資の初心者などは、多過ぎて選べない状態に陥ってしまうからです。

多くの投資信託会社がデパート化したわけですが、もはやそういう時代ではありません。「何でもそろっています」は、「これだけは絶対に負けません」という特色が全くないのと同じであり、そういう投資信託会社はこれから徐々に淘汰されていくのではないでしょうか。

【この記事のポイント】

1. 投資信託の本数は2021年6月末現在で5891本。
2. それでも2018年1月の6163本以降は、徐々に減少傾向をたどっています。
3. 2004年9月は2542本だったので、14年をかけて投資信託の本数は大幅に増えたのですが、背景には投資信託が金融機関の手数料稼ぎのツールになってしまったこと、NISAや確定拠出年金など制度の充実によって、それに対応するための新規設定が行われたことがあります。
4. 投資信託の本数増加は投資家にとって選択肢が広がるメリットがあると言われる反面、「多すぎて選べない」という弊害や、ファンドマネジャー1人あたりの管理本数が増えすぎてずさんな運用につながる恐れが指摘されています。