新規設定が増加したのは手数料を稼ぐため?
実は投資信託の運用本数は一度、大きく減少しました。1990年代の後半から徐々に減り始め、2004年7月には2525本にまで減ったのです。1995年8月のピーク時からすれば実に6割減です。
ここまで運用本数が減少した一番の理由は、ファンドマネジャー1人あたりの運用本数が増え過ぎてしまい、ずさんな運用になることが懸念されたからです。当時、私はいろいろな投資信託会社に取材していましたが、1人のファンドマネジャーが10本以上のファンドの運用を担当しているケースが少なくなく、能力が限界に達しているという声が、方々から聞こえてきました。そのため各投資信託会社が商品ラインアップの見直しを行うのと同時に、各投資信託会社の顔ともいうべきフラッグシップファンドをつくることによって、規模の小さなファンドは整理していくという動きも出てきたのです。
しかし、その動きも長く続きませんでした。2008年以降、再び運用本数の増加が加速し始めたのです。2008年1月に3000本に乗せた後、2011年6月には4000本を突破し、2014年2月に5000本台、2016年9月に6000本台に乗せたのです。
この2008年から数年間の運用本数の増加は、投資信託の最も良くない部分が影響したものと考えられます。つまり手数料稼ぎのツールとして、投資信託が利用されてしまったと考えられるのです。
運用本数が再び増加傾向をたどりはじめた2008年以降といえば、リーマンショックによって世界中のマーケットが大混乱していた時期です。加えて日本国内ではインターネット証券会社が個人の株式取引の主流になり、株式委託手数料の引き下げ競争が加速しました。証券会社にとって株式委託手数料は最も大きな収益の柱だったのが、もはやそうではなくなりつつあったのです。結果、証券会社などの販売金融機関は投資信託の販売に注力するようになり、手数料収入を維持していたわけです。
もちろん一方では、インターネット証券会社を中心にして、投資信託の購入手数料をノーロード化する動きもありましたが、当時はまだ個人が自ら投資信託を選んで買うという時代ではなく、どちらかと言うと販売金融機関の営業担当者が自分の顧客に売りに行くという色彩が強い商品でした。そのため、販売金融機関にとって投資信託は、手数料を稼ぐのに都合の良い商品だったのです。