お金が減るのは「自分の心」のせい!?

心理的要因によってお金を失うケースは、実は詐欺被害に限りません。

例えば住宅ローン。固定金利と変動金利では、変動金利のほうが利率は断然低いのですが、「どの程度金利が上がるか計算できない」「いろいろ考えるのが面倒くさい」と感じる人は、利率が高くても固定金利を選ぶわけです。

「面倒くささ」でいえば、携帯電話等の固定費も当てはまります。最適な事業者やプランを検討し手続きをする、このひと手間が面倒で、甘んじて毎月高めの料金を払っている人も多いのではないでしょうか。

あるいは、「恐怖」でお金が減ることもあります。

「長期的に見れば株式市場は右肩上がり。だから、価格が下がっても保有していればリカバリーのチャンスはある。でも、下がったときに売ったら、その時点で負けが確定する」「資産運用の秘訣は、とにかく市場に居続けること」。

資産運用を始めて数年。「投資初心者」を卒業し、こうした原則を理解していても、大幅下落局面では恐怖に負け、保有していた商品を売ってしまう人が大変多いようです。かくいう私も、コロナショック前に嫌な予感がして、保有していたファンドを売り払ってしまいました。計算したところ、もしもあのとき売らずに保有していたら、今ごろ、数十万円の含み益を得ることができていたようです。

人間は思いの外、合理的な行動ができないもので、その非合理性がときに、まとまったお金を奪うこともあるのです。

一方、西川氏は「時給換算するのが怖いくらい、映画監督は儲からない」と愚痴をこぼしながらも、約20年にわたって第一線で活躍を続け、数々の名作を生んでいます。

分かっちゃいるけど、やめられない。その非合理性がなければ、西川氏は映画作りをやめていたかもしれません。そう考えると、大切なのは非合理性を正すことではなく、自分の「やめられなさ」がどこにあるのかに向き合うことなのかもしれません。

執筆/法雨 まみ ライター。狭く浅く・細く長くをモットーに映画、不動産、美容、投資、キャリア等について執筆。