60歳以降も働くと、老齢基礎年金の代わりに老齢厚生年金の経過的加算額が増える

講師
それでは、一緒に経過的加算額の計算式を確認してみましょう。

講師
Aは、かつて国民年金と厚生年金が別々だった頃の厚生年金の定額部分、Bは厚生年金の加入月数に基づく老齢基礎年金の計算式です。
1986(昭和61)年の制度改正で、厚生年金の定額部分は老齢基礎年金として支給されることになりました。
実は、AとBで加入月数が同じでも、計算上、Aの方が少しだけ多くなります。つまり、制度改正で減ってしまった分が、経過的加算額として厚生年金につくのです。

参加者
う~ん、公的年金の制度改正の話になると、正直ついていけません……。

講師
あっ、すいません、ついつい、専門的な話になってしまいました。
ここで注目いただきたいのは、それぞれの式の厚生年金加入月数のカッコ書きの中になります。

参加者
え~と、Aの式では上限が480月、Bの式だと20歳から60歳の期間、つまり、こちらも480月(=12月×40年)ってことですから、同じようにも思えるのですが……。

講師
ヒントを一つ、差し上げましょう。
セミナーでもお話ししたじゃないですか、人生100年ですから、60歳以降も働き続けることが当たり前の時代になっているんじゃないかと……。

参加者
あっ、そうか! 60歳以降も働き続けると、AとBでは加入月数が違ってくるってことですね?

講師
そういうことです。
60歳以降も厚生年金に加入しながら働き続けたとして、Bの加入月数は増えませんが、Aの加入月数は、480月までなら増やすことができるのです。
当然、A-Bで計算される経過的加算額も増えることになります。

参加者
なるほど~、経過的加算額って、50代の今は大した金額ではなくても、60歳以降も働くと増えるってことですね!
実際、どれくらい増えるのですか?

講師
60歳以降に1年働くと、厚生年金加入月数は12月分増えることになります。
定額単価の1,630円に12月を掛けると19,512円ですから、だいたい2万円くらい増えることになりますね。

参加者
えっ、これはバカにならない金額ですね! 勇気を出して質問した甲斐がありましたよ(笑)。
セミナーでもおっしゃっていたように、長く働き続けることが人生100年への備えになるってことですね。よく分かりました!

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2021年時点で50代の方だと、老齢基礎年金の見込額が満額にならない人が大勢いらっしゃいます。それは冒頭でお伝えしたとおり、学生の頃は国民年金への加入義務がなかったからです。とはいえ、学生時代に戻ることはできませんし、今から追納できるわけでもありません。しかも、60歳を過ぎて厚生年金に加入しながら働いても、老齢基礎年金は増えないのです。

でも、その代わりと言ってはなんですが、60歳以降も厚生年金に加入しながら働き続けると、老齢厚生年金の経過的加算額が増えるのです(この記事では詳細は割愛しますが、当然、老齢厚生年金の報酬比例部分も増えます)。そんなカラクリを、老齢基礎年金が満額にならない50代の皆さまにはぜひ知ってほしいですね。何より、私も同じ50代です。一緒に働き続けましょう!